2012年10月14日

龍神村フィールドワーク1 (殿垣内の狼神社)

そして再び龍神村。
同行してくれたのは友人のみずえちゃんと、mizooさん。途中、龍神行政局の前で語りべの小谷さんとも合流した。小谷さんは御年66歳で、語りべさんとしてはお若いほうだ。特筆すべきは小谷さんの車である。はっと目をひく真っ青なスポーツカーみたいなやつで、実にお若い。私の中で語りべさんのイメージが、あっさり上書きされた日。(ちなみにTシャツは龍のイラストでした)

まずは道路脇で大きな地図を広げ、4人で覗き込む。目指すは、もちろん狼神社だ。前回聞いた話「龍神村のオオカミ」のフィールドワークですもん。狼神社は大熊地区の殿垣内(とのがいと)という集落にあるらしい。
(前回の記事で、話を聞いた場所が大熊と書いたけれどまちがい。話を聞いた場所は龍神村の「龍神」という集落だった。大熊はもっと奥地で、私は今回初めて行く)

スタイリッシュな青い車を追いかけること約20分、大熊の集落に到着した。狭い旧道に軒先をせり出して昔ながらの家々が迫る。谷あいのわずかな平地にひらけた集落で、山際には龍蔵寺。長尾さんがびびって相談にやってきた寺であり、人形を作り、狼を一発で撃てと知恵を授けたのはここの和尚である。

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小谷さんの車は、ゆっくりと集落を抜けていく。大熊から少しだけ離れた隣の集落、殿垣内に入った。奥には奥があるものだ。

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集落内の道はどこも狭く、駐車できそうな場所はない。どうするのかなと思いつつ徐行していると、とある農家の庭先に、小谷さんは車を乗り入れた。そこはすでに空き家となっているらしい。
おりて見回せば、ここも四方を山にはさまれた谷あいの集落で、平地はわずかしかない。山にへばりつくように数軒の家々が点在し、少しばかりの畑と棚田。

あちこちから水の流れる音がする。山から引いている水が、庭先のドラム缶や、道ばたの水場からあふれて側溝へ、光を反射しながらざぶざぶと流れていた。飲料用にもできる清らかな山の水。こういうのを見ると、日本は水に恵まれた森の国なのだと実感する。

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小谷さんの後について、ぞろぞろ歩く。集落の田んぼに干された稲束が、黄金色に光ってきれいだ。農業をしたことのない私でもうっとり見とれるのだから、遺伝子的に日本人の心の琴線に触れるのだろう。

小谷さんが立ち止まった。
雑草の茂った空き地で振り向き、草むらを指差している。
「ここが、もともとの狼神社があったとこです」
「そうなんですか!?」

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そこは長尾家の跡で、狼はその片隅に埋められたのだ。草にまみれて、石積みの基礎が見えた。
ほんの数メートル上には移築された祠(元の祠が朽ちたため)があり、こちらが現在の狼神社だという。イメージしていた通りの、素朴な祠。

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場所を少し移したのは、どんな理由なのか聞き忘れた。普通なら朽ち果てて忘れ去られていくものなのに、近所の人が新しく祠を作り直したのはなぜなんだろう。
約束を守ってもらえずに撃ち殺された狼を可哀想だと思うがゆえか、狼を畏れ敬う信仰が息づいているためか。

「お前なにすんねん。わしは言うたとおり約束を守っただけや」
山からふっと狼の声が聞こえそう。



(つづく)
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【メモ】
● 大熊の龍蔵寺には、河童伝説も残っている。「出会い橋の河童」といわれる話で、和歌山ではけっこう有名。
posted by きたうらまさこ at 17:51 | TrackBack(0) | 紀州の民話・伝説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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