2012年03月26日

生きのびる知恵

少し前に、『六ヶ所村ラプソディー』をようやく観た。
舞台は本州最北端・下北半島に位置する六ヶ所村。日本で唯一、核燃料再処理施設があるところだ。
六ヶ所村が施設を誘致したのは1980年代半ばのことで、映画が公開されたのは2006年。ドキュメンタリーには、賛成、中立、反対派の地域住民が登場し、それぞれの立場で思いを語っていた。

私の頭にこびりついて離れないのは、何てことないワンシーン。野菜を売っている(あるいは買いにきた)おばちゃんが、こんなようなことを言ったのだ。
「人間はミスをするものよ。だから事故は起きるに決まってる」
知識人でも政治家でもない、ふつうの主婦の真理をついたひと言。
映画の公開から5年後に福島原発の事故が起きるわけだが、学者さんには想定外でも、このおばちゃんには想定内だったことだろう。

以来、時々思い出して、ぼんやり考えてしまう。
あの言葉を言わしめたのは知識ではなく知恵だと思うのよね。
人間、最後に役立つのは「知恵」じゃないかと。

そして昨日、石井正己氏の『昔話に学ぶ環境』という本を読んでいてぐっときた。
「人々は生きるための知恵を口承文芸によって伝えてきた」と書いてある。
何となく思っていたことが活字になっていたので、ちょっとすっきり。

「人間はミスをするものよ」

あの言葉も祖先からの知恵を、自分の中にするりと取り入れた結果なのだろう。
昔話などの形で伝えられた知恵は、多かったのではないかな。
例えば人間の愚かさ、自然の大きさ、侵してはならないタブー……などなど。
倫理観や道徳観を育てていく物語が、口承で伝えられてきたのだ。

『昔話に学ぶ環境』から、少し引用してみる。

「文明の発達に伴って、そうした知恵を遅れたものとして切り捨てるようにして近代社会は成立しました。それによって、便利で豊かな生活を手に入れたと言えましょう。ところが、二一世紀を迎えて、そうした営みに対する深い反省が始まりました。その際、口承文芸は失われようとする伝統文化だから大切に保存しなければならない、という保守的な立場には立ちません。もっと積極的に、口承文芸の中から自然や人間と向き合う知恵を引き出し、それを未来に生かしてゆくのでなければ意味がないと考えます」

日本人は、祖先からの〈教え〉をバカにして忘れてきたわけだが、それは、危険を回避して生き延びる知恵を失った、ということに他ならない。
311からの特殊ケースに立ち向かい、新たな暮らし方をデザインするには、知恵がいるのに。
              

写真は先日、神戸で開催された国際シンポジウムの会場からの景色。
同席の可愛らしい女性に阪神淡路大震災の話題をふってみたら「わたし2歳だったから知らないんです」とにっこり。そんな方々がもう社会に出てきてるという衝撃。

DSCF2752.jpg



posted by きたうらまさこ at 22:08| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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