2012年03月31日

日生かきおこ

日生。
ひなせ、と読むらし。
兵庫県の赤穂から電車で16分。岡山県に入ってすぐの港町である。
ホームに立つと海はすぐ近くで、瀬戸内の島々へ渡る定期船が見えた。いい感じだ。

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駅の横には観光案内所があり、地図を指差しながら職員さんが丁寧に説明してくれた。
目指すは「かきおこ」。牡蠣のお好み焼きである。
手渡された「かきおこマップ」には、町内にたくさんあるかきおこ店が細かく記してあった。
15分ほど歩いて、よさげな店を見つけたので入ってみた。浜屋みっちゃん。
戸をあけてぎょっとする。異文化だ。

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「どうぞっ、入って」。正面に立って焼いてるおばちゃん(たぶんみっちゃん)にテコで呼ばれて店内へ。
首にタオル、両手に大テコを持って仁王立ち。なかなかの貫禄である。
狭い店の中央に鉄板がひとつ。まわりを囲む食事中の客。そのまたまわりを順番待ちの客がぐるっと囲んで座っている。
順番待ちの客は、お好み焼きの匂いにさらされ続けながら待つわけで、空腹だったらプチ試練。
鉄板はタイルづくりの台に乗っていて、なかなか年季の入った代物である。
何より驚いたのが、牡蠣の大きさと投入量。キャベツの上に特大サイズがごろごろ10個ほど。
しかも出来上がりのボリュームのすごいこと。これで1枚800円なんだが、食べきれなくて持って帰る人もちらほら。

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鉄板まわりには椅子が6つぐらいしかないために、結構待たされる。
外周にいた時にいろいろ観察したのだが、長時間だらだら食べているとみっちゃんの機嫌が悪くなるようだ。回転率は売り上げに直結するからね。
30分ほどしてようやく鉄板前に移動できた。ぴったりのタイミングでかきおこは焼き上がっている。プロの仕事だ。

食べてびっくりした。生臭感がまったくなくてぷりぷりでジューシー。
実は牡蠣ってそんなに得意じゃなかったのだが、新鮮だとこんなにおいしいものなのね。
感動のあまり「おいしい、おいしい」を連発していたら、「朝むいた牡蠣やからね」とみっちゃんもにこにこしてくれた。
せっかくの上機嫌を壊してはいけないので、気の小さい客はささっと完食。

満腹で町を散策しているとき、変なものを見つけた。
カキフライソフト。ソフトクリームにカキフライを突き刺してソースをかけているようだ。
「甘さひかえめ」って書いてたけど、問題はそこじゃないと思うね。どうでもいいけど。

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posted by きたうらまさこ at 11:06| 旅のおはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月26日

生きのびる知恵

少し前に、『六ヶ所村ラプソディー』をようやく観た。
舞台は本州最北端・下北半島に位置する六ヶ所村。日本で唯一、核燃料再処理施設があるところだ。
六ヶ所村が施設を誘致したのは1980年代半ばのことで、映画が公開されたのは2006年。ドキュメンタリーには、賛成、中立、反対派の地域住民が登場し、それぞれの立場で思いを語っていた。

私の頭にこびりついて離れないのは、何てことないワンシーン。野菜を売っている(あるいは買いにきた)おばちゃんが、こんなようなことを言ったのだ。
「人間はミスをするものよ。だから事故は起きるに決まってる」
知識人でも政治家でもない、ふつうの主婦の真理をついたひと言。
映画の公開から5年後に福島原発の事故が起きるわけだが、学者さんには想定外でも、このおばちゃんには想定内だったことだろう。

以来、時々思い出して、ぼんやり考えてしまう。
あの言葉を言わしめたのは知識ではなく知恵だと思うのよね。
人間、最後に役立つのは「知恵」じゃないかと。

そして昨日、石井正己氏の『昔話に学ぶ環境』という本を読んでいてぐっときた。
「人々は生きるための知恵を口承文芸によって伝えてきた」と書いてある。
何となく思っていたことが活字になっていたので、ちょっとすっきり。

「人間はミスをするものよ」

あの言葉も祖先からの知恵を、自分の中にするりと取り入れた結果なのだろう。
昔話などの形で伝えられた知恵は、多かったのではないかな。
例えば人間の愚かさ、自然の大きさ、侵してはならないタブー……などなど。
倫理観や道徳観を育てていく物語が、口承で伝えられてきたのだ。

『昔話に学ぶ環境』から、少し引用してみる。

「文明の発達に伴って、そうした知恵を遅れたものとして切り捨てるようにして近代社会は成立しました。それによって、便利で豊かな生活を手に入れたと言えましょう。ところが、二一世紀を迎えて、そうした営みに対する深い反省が始まりました。その際、口承文芸は失われようとする伝統文化だから大切に保存しなければならない、という保守的な立場には立ちません。もっと積極的に、口承文芸の中から自然や人間と向き合う知恵を引き出し、それを未来に生かしてゆくのでなければ意味がないと考えます」

日本人は、祖先からの〈教え〉をバカにして忘れてきたわけだが、それは、危険を回避して生き延びる知恵を失った、ということに他ならない。
311からの特殊ケースに立ち向かい、新たな暮らし方をデザインするには、知恵がいるのに。
              

写真は先日、神戸で開催された国際シンポジウムの会場からの景色。
同席の可愛らしい女性に阪神淡路大震災の話題をふってみたら「わたし2歳だったから知らないんです」とにっこり。そんな方々がもう社会に出てきてるという衝撃。

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posted by きたうらまさこ at 22:08| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月19日

ドラマティック福井

遅まきながら青春18切符デビューを果たした。
まずは女二人旅で福井へ日帰り。
それにしても、
改札でちらっと見せるだけで、どこまでだって乗り継げるというのは気持ちが良いものである。
水戸黄門の印籠みたい。

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敦賀に到着したのは午前10時頃。
漁港のそばで朝食をとることにした。
ドアをあけると、70代とおぼしき女の人が控えめな笑顔を見せた。
店の内装は、どう見ても元スナック。幅が広めのカウンターと赤っぽい壁紙。
その上にぶら下がるレトロな照明。
かつてはウイスキーが並んでいたであろう棚。

女主人をよくよく見れば、老いたとはいえ艶っぽい。
若い頃から中年期までスナックのママとしてモテモテで、あまたの漁師と浮き名を流し、港町のおかみさん連中の顔をしかめさせ……うんぬん。
という妄想に溺れながら待つ。

出てきたのがこれ。

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ハタハタの煮付け、あさりのみそ汁、蟹の酢の物、ほたてのバター焼き。しめて750円也。
味付けも値段も素晴らしい。


一時間ほど敦賀を歩きまわって、小浜に移動。
今回の旅の目的は食なので、早速お昼ご飯を食べることにする。
目指す食堂は、さびれた商店街の中にあった。
実は大阪から敦賀に向かう電車の中で、たまたま向かいに座った中年女性がすすめてくれたのだ。
「見た目はきれいじゃないけど、魚がおいしい店ですよ」
旅先でこういう情報が得られるのも電車ならでは。
いつもは車で旅をするので、なんだか新鮮な体験でうれしい。


くだんの食堂の前に立つ。
擦り切れてボロボロの暖簾に目がいった。ボ…ボロボロすぎる。
この暖簾を吊るし続ける意味について、妄想しようとしたが挫折。わからん。
店内に入ると一瞬「ここは裏口であったか!?」と焦るのだが「どうぞ奥へ」と促されて進む。
裏口ではなかったようだ。
厨房の横の狭い通路を抜けると、座敷があった。えらく私好みの…。

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頼んだのは、刺身定食。
昼間ではあるが日本酒を冷やでいただく。地酒「わかさ」である。
酒の肴にカンパチのあら煮をサービスで出してくれたので、それをつまみに一杯。
テーブルの上には一升瓶が置きっぱなし。
「どうぞ呑んでください」と言って角刈りの店主は厨房へ消えた。
…ええんですか?

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刺身定食には大きな焼き鯖も付いていて、これがまた美味なのだ。
感動しながら呑み喰いしていたら、店主が再び現れて言葉を交わすことしばし。
世間話の中にちらっと出た名は幸徳秋水。
「この人もただものじゃないね」と勘ぐりながら呑むのも味わい深い。



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posted by きたうらまさこ at 12:26| 旅のおはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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